スピリッツで「団地ともお」連載中の小田扉デビュー作「話田家」感想。
崩壊した家族、残った兄弟は
物語は両親が離散した3人兄弟の日常を淡々と綴ったもの。
1話冒頭
初っ端から重々しい雰囲気で始まるストーリー、残された兄弟はかつて団欒の間だった家に取り残されて暮らしている。離婚・自殺・万引き・いじめなどヘビーな要素が小田扉のドライな描写で実に淡々と続く。
この状況をどう回復していくのか。マンガとしては実にフラットで、マンガ技法を廃止したような平面的な描写が多く、物語も激しく変化したりはしない。
小田扉の優れた方法は感動話でも長い説教でも無く、三郎、絵美、草男の3兄弟のとぼけた掛け合いと行動で経過する時間に表されている。
兄弟の掛け合い
それぞれの過ごす日常とほんの少しだけ進む物語に少しだけ癒されていくような気がする。
作者のインタビューで「かっこよくならないように気をつけている」という内容の発言を見たことがあるが、場面ありきでない作風がよりリアリティーを生んでいるのだろう。とにかく泣ける!とか設定が凄い!というものではないので作者の変な掛け合いのセリフが笑えないとあまり面白い作品にならないかもしれない。
なんとなくどこかに刺さって取れない棘のような話だ。悲しいけど少しだけ救いがあるような。心に残る。
くやし涙だといいな
ともおが気に入った方はぜひルーツとして読んで欲しい作品。
小田扉作品集 こさめちゃん