「勇者ヴォグ・ランバ」連載中の庄司創のデビュー作である「三文未来の家庭訪問」を読み返してみての感想。
ネタバレありです
宇宙エレベーターが完成しているが、安マンションにはエレベーターの無い近未来が舞台。
主人公笛音リタは「産める男」としてWOLVSという団体で育った小学生。(皆女性のような見た目、遺伝子操作している。)しかしWOLVSの遺伝改造は法律に触れるものであるため、捜査の対象になり団体は解散させられ代表は雲隠れする。
笛音利他
結果笛音家は一般社会に生活を移しリタは公立の小学校に編入する。
リタは当然その容姿と生い立ちからクラスで興味と差別の対象になるが、同級生、支辺(しべ)マキに助けられる。
支辺マキ
支辺さんがまた髪型通りのカタそうな娘で大変そうでイイ!のだが、彼女もまた問題を抱えている。母親が「彼方建設」という団体に入れ込んでおり事実上家庭は崩壊寸前に陥っているのだ。彼方建設は理想社会を標榜して新しい国を作ろうとしているのだが、金銭的な問題から実現しておらず資金難から会員に布教活動も強いている。
そこでリタは持ち前の適応力でこれらの問題を解決していくと言う話。
支辺ママとリタ
WOLVSの代表が演説するシーンで「男性の男性たる部分が現代には不要でブレイクスルーが必要」という主張が述べられる。
作者の主張の代弁なのだろうけど男性の多様性を性そのものから考えたら?という発想は斬新だった。
リタと両親が女性的な方法で社会に適合していくのがきれいにマンガになっている。
ストーリーの説明で省略してしまったが、狂言回しとしてカノセという人物が登場する。彼女は市の委託業者で「家庭相談員」という職業で、文字通り子供のいる家庭に訪問し子供の職業など進路をアドバイスすることで税収の安定化を図る役目を担っていて、この話のSF的解説の役割も得ている。
カノセさん
(どうやらこの世界はあまり理想的な税金回収ができていないのか?また委託業者とかもこの作者らしい点か。)
近未来を彩る各団体の主張や設定の細かさ、社会における性別の可能性、リタとマキの出会いの物語、などそれぞれ単体でも短編ができるんじゃないか?という魅力的なピースたちで埋め尽くされた作品でこれがデビュー作なのが末恐ろしいと思わせる。
またこの四季賞から選者が萩尾望都なのも庄司創が「もってる」ところなのかも。
●気になった台詞「配偶子が小さいことをアピール!!」
収録 月刊アフタヌーン2009年4月号 付録 四季賞ポータブルVol.12 98P
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四季賞冊子つきは1800円(!)と高騰しておりますので単行本化が待ち遠しい。