この物語は
主人公、
矢口ハルオ(やぐちはるお)はクラスでも取り得のない少年。しかし彼にとっての舞台であり、唯一の輝ける場所「ゲームセンター」があった。
夜食代をつぎ込んでも勝ちたいストⅡ。
そんな日々を送るハルオをある日、ぶちのめす対戦者が登場しする。
意地でも勝ちたいハルオは禁じ手の「待ちガイル」、「投げハメ」など邪悪な方法で何とか勝つが、対戦相手にリアルで打ちのめされる。
なんと対戦相手はクラスの人気者、成績優秀、容姿端麗さらにお金持ちのお嬢様
大野晶(おおのあきら)だった。
唯一のアイデンティティを粉砕されたハルオは晶をライバル視し、何かとゲームで争うことになっていくが・・・。
出会いは強パンチから
▲ストⅡのリザルト画面のパロディ。こうしたゲームにまつわる「あるあるネタ」が満載で楽しい。
ライバルとして触れ合う内に、次第にお互いの距離が近づいていく 小学生ならではの距離感が可愛らしく、ゲームの話題を除いてもノスタルジックな昭和の世界での関係性がきっちり描かれていてエンタテインメントしている。
漫画としては決して上手い部類の画力ではないキャラクターも演出の妙で魅力的に映る。
この巻で大野さんが発する台詞は1行のみ(!?)というのも押切先生の腕の証明だ。多くを語らせずに読者に想像の余地を残すのは個人的に好きな演出だ。
二人の距離感
▲迷惑かけたおわびに100円キャンディーをおごるハルオ 大野さんがかわいい。
▲何の不自由もなさそうな大野さんにも悩みはある。ハルオは彼女を「遠くに連れて行ってくれる存在」なのかもしれない。
▲遊びつかれて帰るバスの中で。
▲もちろんR25なおっさんゲーマー歓喜のなつかしゲームのエッセンスがちりばめられている。
付き合うとかセックスとか結婚の無い、小学生の男女の友情とも愛情とも取れない信頼関係がちゃんとベタに描かれていて、押切氏の自伝的な部分もあるのかセピア色の“あのころ”の日々が鮮明によみがえる。
大手ブロガーの「俺的ゲーム速報」が猛プッシュしていたので読んだが、なかなか面白い作品。
読み込むうちに崩れた絵が魅力的に変換されていく。
ネタバレになってしまうのだが、1巻の最後に大野さんとハルオには悲しい結末が起こり、状況を変えられない無力な少年時代の締めくくりとなっている。少年少女の物語としてもきっちり読ませる作品だ。
ここから2巻
1巻の舞台から3年後の1994年、ハルオは中3になっている。
相変わらずのダメな感じでゲーム漬けの日々。大野とはなれたハルオはいつもの日常を送る。
同級生
日高小春(ひだかこはる)はハルオのマイペースな人柄に次第に惹かれていくが、ハルオは打倒大野さんに燃えていて気がつかない。
▲PCエンジンGT
▲小春はハルオを目で追う日々
▲いつか大野と互角に戦いたいハルオ
▲ちゃんとラブコメしてます。
▲ハルオの母ちゃんがいい味出してる。
ちょっと「女の子が主人公に惹かれる理由が弱い」とか言われそうではありますが、おっさんホイホイのゲームネタ「ストⅡ」「サムスピ」「飢狼」「源平討魔伝」「ベラボーマン」「PC原人」などがてんこ盛りで懐かしく、楽しい部分もありながら思春期の揺れる気持ちが切なく、次巻への引きも強い。
このデフォルメの強いキャラが、次第にリアルな登場人物として脳内で変換されていく雰囲気作りは押切作品の真骨頂と言える。
3話まで無料で読めるので、興味をもったおっさんゲーマーはチェックすべし。
立ち読みURL 第1話
http://www.square-enix.com/jp/magazine/biggangan/tachiyomi/his01/_SWF_Window.html
立ち読みURL 第2話
http://www.square-enix.com/jp/magazine/biggangan/tachiyomi/his02/_SWF_Window.html
立ち読みURL 第3話
http://www.square-enix.com/jp/magazine/biggangan/tachiyomi/his03/_SWF_Window.html
ハイスコアガール(2) (ビッグガンガンコミックススーパー)
押切 蓮介
2012-06-26
amazon
ハイスコアガール(1) (ビッグガンガンコミックススーパー)
押切 蓮介
2012-02-25
amazon