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ヱヴァンゲリヲン新劇場版Q見てきました。 壮絶にネタバレアリです

17年前にテレビ放映からはじまった「新世紀エヴァンゲリオン」。
その新たな再構築を目指して制作された新劇場版4部作の3作目「Q」が公開された。

いきなり奈落から
前作「破」でヒロイン綾波レイを救い出すためには「世界がどうなったって構わない」と前進した物語を、
「Q」では否定する世界が構築されている。
前作から14年後という唐突な展開、カタストロフの原因になったシンジへの批判が集中する。

さらには所属組織ネルフの分派・対立や舞台である迎撃都市の消失など超展開が連続する。
難解だったTVシリーズを想起させる流れでもあるが、舞台装置をことごとく破壊してみせるやり方は監督の作家性が前面に良くも悪くも出ている。

震災後の影響から作り直した噂もあるが、壮絶なちゃぶ台返しで「分かりやすく爽快な新劇場版」の流れを破壊した。

冒頭10分は金曜ロードショーで先行公開されたド派手な宇宙戦で見ごたえのあるシーンから始まるが、
次のシーンでは上記の超展開がスタートしてしまう。


▲新組織ヴィレが率いるヴンダー


戦艦登場!? 空回りする世界

舞台の一新で、単純に世界に入り込みにくいという点以外にも、どうもフワフワしたというか、シックリこない会話劇が気になる。

それっておかしくない? と思う点

・シンジが目覚めても歓迎されなければ艦橋に呼ばないよなぁ。
・トウジの妹サクラも、シンジを否定するシーンで「トウジが死んだ」とか強烈な14年後の状況が伝えられていない。
 ヴィレのクルーも家族の描写がないし。否定のための否定のシーンになった感が強い。
※トウジの安否は実際には不明ですが、サードインパクトの原因になったシンジにとって説明不足で実感わかないんじゃないか?
・いくら主人公が世界崩壊の原因だとしても、14年経つと直接的な怒りよりももっと温度の低い否定にならないか?
・アスカはシンジのことが好きなら、いまさらの帰還に他キャラより怒りの演出を強くするべきでは?

などなど

なんだか戦艦のくだりでは全体的に上滑りしていたように思う。
使徒も今までのものに比べて印象的なデザインでもなかったし。艦をグルグル旋回させて使徒を振り落とす作戦はさすがミサトだなって感じですが。

「庵野作品は全キャラが監督の分身で全ては私小説」という意見も旧劇時代から言われていたことだが、それを踏襲してしまった部分もあるかもしれない。ここは庵野作品の魅力でもあるのですが。

14年経っても14歳のままのシンジにはいつまでもエヴァにこだわる観客への皮肉と自身への自嘲、ミサトにガイナックスからの独立の苦悩、世界を壊してもやりたい事しか見ていないゲンドウと自身を重ねていると思われる描写も。

今までのアツい展開からも毛色の違う雰囲気を感じる。

それにしても、ええ加減なミサトにネルフのクルーの大半はついていかないよなー。
ヴンダー発進時に全員否定してるし、出世の速さの根拠が不明だ。
(ネルフの時は父の功労に報いている可能性がまだあった)
赤城リツコがゲンドウを捨ててミサトを選ぶか謎ですよね。新劇では恋愛表現については直接描写はないけど。

そういう部分が多くて話に入れないというか、シンジ自体もフラフラしていて主観がブレているようにも見えた。
誰に感情移入すれば良いのか分からない。


▲手を差し伸べるアヤナミ、シンジの爆弾チョーカーに手をかけるミサト。突然突きつけられる二択


主人公は誰なの?

そりゃ当然シンジなのですが、当のシンジの行動に根拠が弱くてここでも浮遊感。
目が覚めると突然、全否定の世界に投げ出されたシンジ、助けたはずの綾波も知らないクローンに変わっている。
おかしくなるためのお膳立てがバッチリの状況に、まさに天使のカヲル君登場で好きにならない方がどうかしている。

そこまでは良いんだけど、槍を抜くくだりでは主観がアスカになっているように見える。
陶酔するカヲル君の「槍を抜くのはやめよう」を反対してまで「槍を抜いてヤリ直す。」のダジャレは面白くない。


▲渚カヲル 旧劇とは微妙に台詞が変わっていて、ループを匂わせる狂言回しの役割もある。


▲エヴァ13号機 複座式のエヴァ やっぱり槍は男性器なのかな。


▲この涙を糧に成長できるのか?

まさに旧劇までのダメダメ感漂うシンジにアスカが立ち向かうシーンは面白い。
ここでも負の台詞「女に手を上げるなんてサイテー」が出るなど物語はTV版を思わせるディスコミュニケーション炸裂。


▲分かりにくい構図、エヴァVSエヴァ 黒いスーツも含めてΖガンダムのオマージュかな

「Q」の内容を見て分かりやすく漫画化してみた


単品では条件付賛成

色々書いてきたが、1本の映画として捉えるならばあまりお勧めしにくい作品になっているのは事実で、
庵野監督の公開オナニーショー新作が面白いと思えるならば必見ともいえる。
全体的に雑に感じる部分もあるが、ライブ的制作を謳う作風なので震災後の臨場感もあるか。
今までの作品のエネルギーと次回作への期待と共に、監督自身にエンタメを見出すならばありかもしれない。

併映の「巨神兵東京に現る」は言葉足らずなサードインパクト時の民衆や避けられない恐怖の補足の役割を果たしている。
俺はエヴァに呪われた客なんで次作も見ますけどね。


しかし、結末にはわずかな希望も  

自我が芽生えた綾波は簡単に消え去り、シンジを知らない“レイのようなもの”に変わる。
アヤナミレイ(仮)

▲アヤナミとは別の綾波。意味が分からん

▲アヤナミ邸 天井なし



▲劇中では「綾波型の初期ロット、アヤナミシリーズ」などと呼ばれる、より人形感が強いキャラ。

エンディングではアスカがシンジの手をとり、EOEを思わせる荒廃の地を進む。
これは旧劇からの大いなる一歩で、EOEエンディングの「キモチワルイ」から、量産型のアヤナミも一緒に連れ出すアスカは大人になっているのかもしれない。

▲この3人(旧劇の舞台で旧劇とは違う3人)が進む先に希望を感じる。
この際にシンジが“父の思い出で、かつて助けた綾波の形見でもある”SDATを落とし、アヤナミが足を止めるシーンがすばらしい。
旧作から続く物語そのものをあらわすSDATを拾うのも捨てるのも物語の進行に繋がる。



▲エヴァの呪いで28歳になっても14歳の容姿のままのアスカ
今後のストーリーをどう転がすかの鍵になるだろう




原点回帰かリスタートか

とにかくオマージュやパロディの多い作品ではありますが、監督自身の旧作からの引用が多く、Qが機転になっている事は想像に難くない。
戦艦発進時や初号機奪還作戦時のBGMに「不思議の海のナディア」や「トップをねらえ」のエクセリヲンを思わせるヴンダーなどかつての作品からのイメージ、巨大綾波や初号機の地球投下や荒野のアスカとシンジなど旧劇場版の続きを思わせるシーンの多用も見られる。
実際に新劇が旧劇の地続きの世界かどうかはさておき、監督がEOEで描ききれなかった続きが描かれることだろう。


その他

伊吹マヤがおっさんみたいなレズになっていました。

▲太い眉も赤城センパイへの憧れからでしょうか

▲エヴァショップのシルエットの答え合わせ

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q を観て閣下はお怒りの様です



▲総統お気に入りの鈴原サクラ

Qのせいで序・破の価値が変わってしまった。
ストレートに終わらせないのはさすがだ。

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 EVANGELION:2.22 YOU CAN (NOT) ADVANCE.【通常版】 [Blu-ray]
林原めぐみ (出演), 緒方恵美 (出演), 庵野秀明 (監督)

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